ニューロマーケティングとは?活用方法・事例を解説
マーケティングを考えていく上でアンケート調査は欠かせないものです。しかし、通常のアンケート調査のみでは理解することのできない顧客の心理があります。 本記事で解説するのは、顧客自身が気づいていない心理的な事象を解き明かす脳科学を活かしたマーケティング手法「ニューロマーケティング」となります。
目次
ニューロマーケティングとは?|簡単に解説

ニューロマーケティングとは簡単にまとめると「脳科学を用いて消費者の脳の反応や心理、行動などを明らかにしてマーケティングに応用すること」です。
ニューロマーケティングに関する研究論文では下記のように解説されています。
“ニューロマーケティングは,マーケティング,心理学,神経科学を統合しようとする研究領域であり,種々の理論的アプローチや実験的方法を用いて消費者の選択や意思決定のモデルとしてどれが相応しいかを特定したり,消費者の意思決定現象の神経科学的基盤を明らかにしたりすることで,マーケティング研究や実務に役立てようとする研究分野である”
竹村和久.“ニューロマーケティングと意思決定研究 ”.c オペレーションズ・リサーチ.2016.
単なるマーケティングの一手法ではなく、心理学や神経科学など様々な領域から消費者の意思決定に関する理解を深める研究となっております。
ニューロマーケティングの研究に関しては、様々な大学や研究機関がMRIの技術等を活用して脳の働きを計測した実験を行っています。また、直接脳の働きを計測するだけでなく、人間の視線の動きや表情なども研究の対象となっております。
こういった研究で得られたデータから顧客の心理や行動が明らかになり、マーケティングの実務に活かされることとなっています。
ニューロマーケティングが広まるきっかけとなった論文について

ニューロマーケティングが広く知られることとなったのは2004年にアメリカで発表された一つの論文がきっかけとなっております。
このニューロマーケティングの最も有名な事例とされているのがコカ・コーラとペプシコーラを用いた実験となります。
Samuel M McClureら.“Neural Correlates of Behavioral Preference for Culturally Familiar Drinks”.2004.
原文は英語であるため、日本語で簡単に解説していきます。
実験の手法
この実験はfMRIという脳の活動を画像化して計測する手法を用いて行われました。 被験者は「ブランドが隠れている状態」と「ブランドが隠れていない状態」でコカ・コーラとペプシコーラの味覚テストを行いました。
実験の結果
「ブランドが隠れている状態」ではコカ・コーラとペプシコーラの評価に違いはありませんでした。
しかし「ブランドが隠れていない状態」ではコカ・コーラの方がペプシコーラより好まれるという結果になりました。
また、コカ・コーラとペプシコーラの「ブランド名が隠れていない状態」で行った実験では、コカ・コーラの場合のみ反応した脳の部位がありました。それは記憶の処理を司る海馬と行動の判断や作業記憶(ワーキングメモリー)を司る背外側前頭前野です。
記憶や判断を司る脳の一部分が反応したことから、過去の記憶にある「コカ・コーラは好きなブランドで美味しい」などといったバイアスによってペプシコーラよりコカ・コーラのほうが好まれる結果となったのだと推測されます。 これは「質の良い商品を作れば売れるはず」と考えられてきた当時のマーケティングに非常に大きなインパクトを与える実験結果となりました。
実験からわかること
この実験からわかるのは商品そのものの価値だけでなく、ブランドに対するイメージ次第で消費者の感じる体験は異なるということです。
商品そのものを磨くことはもちろん重要ですが、それに加えて「消費者が商品に対して持つイメージ」をより良い方向に持っていくことが非常に重要であるのです。
ニューロマーケティングの事例

この項目ではニューロマーケティングを実際に活用している企業の事例を紹介していきます。 ここで紹介している事例は実際にリサーチから行っている企業になります。
アサヒビール
アサヒビールでは脳波測定とアイトラッキングを行い、パッケージデザイン作成の参考にしているそうです。
「お客様はパッケージのどの部分を見ているのか」「それを見ているときに、どう感じているのか」を把握することで消費者の理解を深めてデザインに活かしています。
【参考記事】大胆なパッケージ刷新の決め手は、脳波測定×アイトラッキング!アサヒビール「もぎたて」が仮説を検証
アース製薬
アース製薬では脳波測定にVRを組み合わせて調査を行っています。香りについての調査を行う場合、実験対象者が目を瞑って香りに集中すると香りとは関係なくリラックスしたときに出るアルファ波が出てしまいます。そのため、VRを使って目を開けたまま実験を行うことで、香りに対して正確な計測を行うことが可能となりました。
【参考記事】アース製薬が脳波×VRで挑んだ感覚の定量化/ニューロマーケティングは顧客の無意識にどこまで迫れるか?
ニューロマーケティングを実際に行いたい場合はどうすれば良い?

fMRIやアイトラッキングなどを用いてリサーチから行いマーケティングに活かしている事例は大企業や研究機関に限られますが、ニューロマーケティングのノウハウを活かしてマーケティングに役立てている企業は数多くあります。
自社でリサーチから行い、大規模な実験を行う場合は専門の研究機関等と連携して行っていくことが必要です。
しかし、そういった実験は行わず、ニューロマーケティングの知見を自社のマーケティングに活かしたい場合ならマーケティング支援を行っている代理店に相談するのが良いでしょう。
メディアポストインフォメーションでもニューロマーケティングの知見を活かしたマーケティング戦略の立案・コンサルティングを行っておりますので、気軽にご相談ください。